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2012年6月10日 (日)

アカデミア・ユリコ・クロヌマ閉幕
叙勲の伝達式を機に帰国された黒沼ユリ子さんのご報告

「1980年発足以来、足かけ32年になりますメキシコのヴァイオリン塾、アカデミア・ユリコ・クロヌマを今学期末の6月30日で幕を引くことを決心いたしました。72歳になった今、最終的な決断をいたした次第です」…叙勲の伝達式で帰国された黒沼ユリ子さんのご報告です。(黒沼さんのプロフィールは文末に付しました)

Photo 閉幕の決断に至る主なる要因は、次の3点にあると考えております。
 まず、近年のメキシコ市内における治安と交通渋滞のさらなる悪化。そこにソ連邦・及び東欧社会主義崩壊後の国々からのヴァイオリニストたちのメキシコへの大量移住。中流以上の家庭の子弟たちは、自宅での出稽古を申し出る彼ら教師に習うことを優先し、妻の運転する車で子供がアカデミアに通うことを夫が許さなくなった。
 次いで、インターネットの急速な浸透により、子供や学生たちは自宅でパソコンと向き合う時間が大幅に増え、毎日、何時間かの自習が必修のヴァイオリンやチェロの練習に興味を示す者が激減した。

 次が最大の理由ですが、俗に「ベネズエラ方式」と呼ばれている音楽教育システムがメキシコに流入し、国家文化芸術審議会(日本での文化庁にあたる)直属の管轄下で、全国で子供たちへの無料音楽教育が行き渡たりました。そこでは「奨学金」の名目で毎月数千ペソの現金支給があり、低所得家庭への経済援助も充実してきました。現在ヨーロッパはじめ日本でも高く評価されているシモン・ボリバール交響楽団や、同システムで育ち、今や世界の楽壇で最も活躍する指揮者となったグスタボ・ドゥダメルらの存在に刺激されて、メキシコでも10年ほど前に国立少年少女交響楽団が創立されました。以上のような状況下で、昨今のアカデミアでは生徒数が激減し、以前のような存在の意義も必要性もなくなり、存続そのものが不可能となった訳です。
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 30年前には私共のアカデミアが唯一の幼児および少年少女への音楽教育の場でした。最盛期には生徒数120名を超し、門外にウエイティング・リストの生徒が並ぶこともありましたが、事態は大転換してしまったのです。何事にも「始めあれば終りあり」と言われますが、おこがましく申せば、いわば“先見の明”があり「後世のために誰よりも一歩先んじて貴重な貢献をした」と仰って下さる方々の言葉を信じたい気持ちです。
 アカデミアには、ご寄付いただいた子供たちのヴァイオリンやヴィオラ、チェロが計100台あります。1983年のメキシコ通貨大暴落で子供用のヴァイオリンが贅沢品あつかいとなり、輸入禁止品目に加えられてしまいました。そこで、日本で「不要になった小さなヴァイオリンをメキシコの子供たちにご寄贈願えないでしょうか?」というキャンペーンを展開し、多くの方々から提供いただきました。その楽器を今後どのように活用したらよいのか?考え抜いた末、国家文化芸術審議会を通じて、地方の国立少年少女交響楽団に「日本からの善意」として託すことに決心いたしました。
 このように「公式にメキシコ側へ日本の善意が届けられる」ということを、私は6月6日の叙勲の伝達式後、日本全国津々浦々から当時ご寄贈下さった方々へお礼とご報告をしたいので、もし何らかの方法で、マスコミ関係のみな様からのご援助が戴けましたら大変有難く、この不躾なお願いをご理解戴けましたら幸いです。
 今後の楽器管理は当然、音楽振興国家システムがすることになっております。音楽を愛するメキシコの子供たちが、これらの楽器を通じて、今後さらに日本との友情を深めて行ってくれることが出来ましたら、これ以上の歓びはありません。一抹の寂しさが無いと言っては嘘になりますが、何しろ歳が歳ですので、この辺でみな様から“無罪放免”のお許しを戴けます様、お願い申し上げます。
…「音楽の原点は、歌を歌うように、バイオリン(他の楽器も同様)を弾くことです」をモットーとする黒沼ユリ子。1940年、東京に生まれ、8歳の頃からヴァイオリンを始め、1956年、桐朋学園高校音楽科1年で日本音楽コンクール第1位及び特賞を受賞。その後、1958年プラハ音楽芸術アカデミーに留学する。プラハでいくつかの賞を受賞した後、首席で卒業し、以降世界各地で演奏活動を行っている。1980年、メキシコシティ・ コヨアカン地区に「アカデミア・ユリコ・クロヌマ」を開校し、メキシコを本拠に世界各地で音楽活動を行っている。1988年にフェリス女学院大学大学院の教授に就任。2007年メキシコで音楽家に与えられる最高の賞とされるモーツァルトメダルを受賞。
 日本記者クラブで6/7に記者会見が催されましたが、その様子は下記のURLで見られます。留学先プラハでのメキシコ人との国際結婚、アカデミア発足の経緯、麻薬により治安が悪化するメキシコの現状など、1時間半を超える黒沼さんの淡々とした語りが収録されています。
http://www.youtube.com/watch?v=JX8D2c8m9GI&feature=relmfu
注:写真は、右クリック、「リンクを新しいウィンドウで開く」で、拡大できます。

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