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2012年10月14日 (日)

CD:浅井咲乃/ヴァイオリン協奏曲《四季》ほか
延原武春/テレマン室内オーケストラ
(モダーン楽器使用) LiveNotes WWCC-7706 \2,700税別

               

ヴィヴァルディ:ヴァイオリン協奏曲《ムガール大帝》《四季》

121011_2_3 ナミ・レコードが先月リリースした3枚から、まずこの一枚を選んだ。1963年、延原武春が結成したテレマン・アンサンブルが来年50周年にならんとする。古楽器アンサンブルで、自らもバロック・オーボエ奏者の道を歩んできたのだが、今回のCDには‘モダーン楽器使用’とある。その心境が寺西肇氏の《四季》のプログラム・ノーツに潜んでいた。
…今回の録音には、これまで長い間、演奏の拠りどころとされてきた1725年のミシェル=シャル・ル・セーヌ社による初版譜を基にした校訂譜ではなく、「作曲者の創作当初の意図を、より反映している」と言われるマンチェスター手稿譜(1726年頃)を基に、古楽界の先駆者であり、指揮者で鍵盤楽器奏者のクリストファー・ホグウッドが校訂した楽譜(独ベーレンライター社から2000年に出版)を使用。この楽譜は、例えば「春」の第1楽章で、稲妻を描写する第1と第2のヴァイオリンが掛け合いになっているなど、より立体感のある表現が特徴だ。
 そして、ソリストを務める浅井をはじめとするメンバー全員が、ピリオド楽器での演奏に長けていながら、あえてモダン楽器での演奏を選択。これについて、音楽監督の延原は、「現代の演奏空間では、バロック奏法を生かしたモダン楽器でもたらされる響きにこそ、より大きな可能性があるのでは。浅井というソリストの持ち味も考慮した上で、今回の録音においても、その可能性にスポットを当ててみたかった」と意図を説明している。
 また、今回のソリスト浅井咲乃については、谷夏樹氏が“ため息を誘うヴァイオリニスト”と綴っている。
「弾いていないように見える」─ 学生時代の浅井咲乃さんを評した言葉。どちらかといえば批判めいた評価に違いない。肘をぐいと上げた右腕で弓を持ち、肩と顎とで楽器を強く挟み込み、時に悶えるような表情で演奏することを善しとする世界。そこに棲むヴァイオリニストにとって、楽器の構造に従順で、身体的に無理のない浅井さんのフォームが「不自然」に見えても致し方のないところだ。
 しかし、世界が変わればそれは、この上なく自然で理想的な姿と理解されるようになる。幸いにして日本テレマン協会はそういう世界だった。そういう世界を50年掛かって作り上げたのが延原武春さんだ。といっても延原さんが「独裁体制」を敷いて思いのままに「王国」を作ったわけではない。共演したたくさんの音楽家たちと延原さんとの相互作用によって、テレマン協会の流儀はでき上がった。
 そんな延原さんに今、もっとも刺激を与えている音楽家のひとりが浅井さんだ。延原さんの考えがすぐに血肉になっていく。その上、音楽が延原さんの目指すところのさらに先を行く。新しい時代の幕開けが来た、とスタッフ一同が思ったのも無理はない。
《ムガール大帝》の鬼気迫る様子や、《四季》の繊細な自然描写は、このCDをお聴きになれば明らかだ。しかし、それが「弾いていないように見える」フォームから繰り出された音楽だとすれば、その驚きはより大きくなるに違いない。驚きが大きければ、ため息もまた深くなることだろう。ときには感嘆のため息をつくのも悪くないものである。
ナミ・レコード Co.,Ltd
TEL 03-3440-5542 FAX  03-3440-5541
CD受注専用FAX 03-3440-5401
http://www.nami-records.co.jp/archive/20121001.html
注:写真は、右クリック、「リンクを新しいウィンドウで開く」で、拡大できます。

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